『もっと、カボワン・スポーツ!』
代表KODAIRAの商品開発への想いなどを綴ったスペシャルコラム
【コラム】:空力の基本的な考え方
「空力(エアロダイナミクス)」と聞くと、サーキットを走るレーシングカーだけのものと思っていませんか? 実は、ストリートを走るクルマにとっても、時速80kmを超えたあたりから、風は牙を剥き、または最高の味方になってくれます。
今回は、KABO1 SPORTSがパーツ開発において最も大切にしている「クルマにかかる空力の本当の基本」を少し紐解いていきます。
1. 飛行機とは真逆!地面にクルマを「押し付ける」ベルヌーイの定理
クルマの空力を考える上で、すべての基本となるのが「ベルヌーイの定理」です。 難しい数式は抜きにして一言で言うと、「空気の流れが早くなると、その場所の気圧(押し付ける力)が下がる」という法則です。
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飛行機の翼: 上側を膨らんだ形状にすることで、上の流速を早め、上向きの力(揚力)を生んで空へ飛び立ちます。
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クルマの空力: やりたいことは 飛行機とまるっきり上下真逆
クルマは本来、上面のラインが盛り上がっているため、普通に走ると飛行機のように浮き上がろうとする(揚力が発生しやすい)形状になっています。 これを抑え込み下向きの力(ダウンフォース、または揚力の低減)を発生させて、タイヤを地面に強く押し付けること。これが空力カスタムの最大の目的です。
タイヤのグリップ力(押し付け力)がアップすれば、コーナリング中はもちろん、直線でもクルマの姿勢がピタッと安定し、高速域を安全かつスムーズに駆け抜けることができるようになります。
2. リアウイングの構造と、本当に流速を上げるべき部位”床下”の話
ダウンフォースの代表格有名なのが”リアウイング”ですね。 一般的なGTウイングやフラップの断面を見ると、下側の面が大きく弧を描いて距離が長くなっています。これもウイングの下側を通る風の距離を長くして、流速を極限まで高め、下に押しつける力を生むための構造です。
しかし、今回お伝えしたい目的の面白いポイントは、目に見えるウイングだけでなく”床下(車体の底)” にあります。
フロントバンパーやリヤウイング単体だけでダウンフォースを作っていると思われがちですが、実は車体そのものを一枚の大きなウイング(フラップ)にするというイメージが理想です。
床下に流れ込んだ風を、いかに一番早く、スムーズに通り抜けさせるか。 そして、車両の末端(リヤバンパー下部)から綺麗に空気を排出してやる。このとき、引き抜かれた風はリヤバンパーの形状に沿って斜め上に駆け上がろうとします。これこそが、ウイングの最後端であり最上端の角で起こる理想的な空気の引き抜きと同じ現象を、床下全体で実現した状態なのです。
3. すべてはバランス
自動車メーカーが作る市販車は、上面・側面・下面と、すべての風の通り道が計算されています。しかし、クルマの目的(たくさんの人を運び車内空間を確保した目的のワンボックスか走行の追求に特化したようなスポーツカーなのかや、車格、そして日本の厳しい「保安基準(車検制度)」というルールの壁があるため、すべてが理想の形状で作られているわけではありません。
そこで登場するのが、アフターパーツの存在です。これらは、市販車が持つ 浮き上がりやすい揚力という特性を、マイナスへ引き戻すために存在するものやそれをしないものもあります。各パーツには、それぞれ見えない風と戦う明確な役割があります。
パーツ役割・効果として、リアウイング / ダックテール後方に流れる風を整え、車体後部を下に押し付ける、または引き抜くため。フロントでは、カナードの役割としてバンパー付近で風を受け止め、フロントに強い圧力をかける。フロントフェンダーダクトでは、最も空気圧が高まるタイヤハウス内の圧力を外に逃がしその圧力の高まりを下げる。そのために上または横にダクトを設けへ風を逃がす。
リアフェンダーダクトでは、フロントの対策を行ってもなお車体への揚力が残る場合に、リヤ側の圧力や揚力を逃がす目的で。これとともに強く関わるのがリヤバンパー部後端に設ける風抜き穴(ダクト俗に言うパラシュート効果(バンパー内に風が溜まる抵抗)を、ドラッグや乱流を起こさない絶妙な位置から綺麗に抜いていく。
ここで重要なのは、「ここのパーツを付けたから終わり」ではないということです。 一箇所を弄れば、上面・下面・側面のすべての風の流れと力のバランスが変わります。フロントとリヤ、足回りも含めた「全体のバランス」が綺麗に取れたとき、純正の遥か上の領域での吸い付くような高速安定性が生まれるのです。ストリートカーにおいては、必ずやっておけば良いという訳ではなく、欠如や障害になっていることが明確だという程度の時にだけ、そのバランスを変えるために改良を加えれば良いと考えます。変更すれば必ず全体のバランスに変化が起きますので人も歩く道路を走行する以上、手に負えないようなバランスになってしまう事も頭の片隅には考えておく必要があります。
4. オマケネタ-----実は最大の課題テーマ
走行中に都度おきる空気の真空状態とクルマを後ろに引っ張るウェイク
最後にオマケ話として、風の少し意地悪な動きを紹介しましょう。
風に対して垂直に近い壁(抵抗)があると、当たった瞬間は強い圧力がかかりますが、そこから風がめくれるように反転して、壁の裏側に回り込もうとします。 このとき、壁のすぐ後ろ側は空気が一瞬なくなるため、ほぼ真空(負圧)の状態になります。
風は圧力がかかり回避するときに一時的に通常約1mくらい(条件による)急加速しますが、その後は一気に流速を失い、完全に勢いのない、力の無い停滞した空気の塊になります。これはウェイクと呼ばれてます。 オープンカーをオープンで走らせた時に車内(キャビン)やトランク付近で風が入り込んでは止まる「キャビンウェイク」や、前輪を含むタイヤ等によってドア付近から後輪手前位まで風が淀む状態のこれが原因です。
最も厄介なのはタイヤウェイク。さらに空力を乱す大敵が「タイヤ」です。 前面から見て露出したタイヤは、回転しながら路面の空気を一緒に巻き込み、路面でプレスするように圧縮して後ろ側へ蹴飛ばします。ここで勢いを増し直ぐに勢いを失った空気が激しいタイヤウェイクとなります。
速度が上がると、このタイヤウェイクはどんどん上や各方向へ巨大化し、車体側面を飲み込んでいきます。 そして恐ろしいことに車体の底面に、側面に当たれば車体へ圧力をかけ底面であれば揚力が掛かります。最悪なのが超高速域になると、クルマの後方で剥離した風から変化した大きなウェイク真空に近い空間がクルマの速度に後方から追いつこうとして大きくなったタイヤウェイク等と合流。巨大化した負圧の塊が、後ろからクルマを強烈に吸い、引き戻そうとする力抵抗へと変化します。これが、高速道路走向上で速度が伸びない、加速が重くなる最大の影響です。
結論: 見えない風を、美しく、味方に
空力カスタムとは、単にダウンフォースを得るだけでなく、こうした「タイヤウェイク」や「後方の真空状態」をパーツによっていかに綺麗に整流し、引き剥がし、抵抗を減らすかというトータルバランスのつくりとその格闘です。
基本の理屈がわかると、パーツひとつを見る目が変わってきます。また空力を味方につけた時の感触と安定、安心感からくる余裕と操作性のしやすさは別格です。 皆さんの愛車も見えない風を味方に、もっと走りを楽しく(More Fun to drive)してみませんか?

